高知工科大学 環境理工学群生命科学専攻シンボル

染色体機能制御学研究室石井研究室

遺伝子の運び屋である『染色体』の謎を解き明かす

なぜ生物のゲノムは複数の染色体に担われるのか

ゲノムは生き物の多彩な生命活動プログラムを司っている指令塔です。プログラムはそれぞれが多くの遺伝子が参加する相互ネットワークであり、ゲノムには生き物の全ての遺伝子情報が書き込まれています。そのためゲノムは『生命の設計図』と呼ばれたりもします。

しかしゲノムとは実際にはDNA(デオキシリボ核酸)という二重らせんのポリマー物質です。膨大な情報を含むために、ゲノムのDNAはとても長大になります。それを生き物は『染色体』という物体に組み上げて細胞の核の中に保持しています。ゲノムを安定に維持し受け継ぐことは生き物には不可欠な掟ですが、染色体はその働きにおいて常に中心的な役割を果たし続けます。

染色体というとX型の物体がイメージされます。しかし、実際の染色体はいろいろなかたちをもっています。大きさも様々です。そして、いろんなかたちと大きさをもつ複数の染色体が合わさってひとつの生物のゲノムになっています。私たちはこの、複数の多様な染色体によってひとつのゲノムが担われる理由を理解したいと考えています。

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セントロメアを中心に考えてみる

複数の染色体によってゲノムは担われているため、ゲノムの継承はいつもたいへん複雑な作業になります。私たちヒトの場合、細胞が増えるたびに46本もの染色体を均等に分配していく必要があります。染色体の均等分配に重要なのは『セントロメア』という場所です。X型の染色体の場合、その交差しているように見える部分がセントロメアです。細胞はセントロメアの場所をつかんで左右逆向きに引っ張ることで染色体を二つに均等に分けます。セントロメアが無いと染色体は分けられませんし、セントロメアが一つの染色体上に二つ以上あっても染色体は正しく分けられません。ゲノムには、ちょうど染色体の数だけのセントロメアが必要なのです。

しかし、驚くべきことにセントロメアは無くなったり新しく生まれたり染色体上で場所を移したりします。それは染色体のかたちや数の変化につながる反応であり、ゲノムの存亡にも関わる問題です。実際このような染色体構造のダイナミクスは、細胞がん化にも、生物の進化にも、深い関連があるものと考えられます。しかしその実体はまだよく分かっていません。

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私たちは酵母(分裂酵母:Schizosaccharomyces pombe)をモデル生物として、このような染色体構造ダイナミクスを実験室内で再現し、その仕組みを解き明かしていきます。さらにその結果として生き物には何が起こるのか、確かめていこうと考えています。