高知工科大学 環境理工学群生命科学専攻シンボル

分子発生制御学研究室蒲池研究室

ヒトを含めた動物の発生の仕組みをゼブラフィッシュを使って解明する

どのような動物であれ、一つの受精卵からからだ作りは始まり、複雑なプロセスを経て多様な組織・器官をもつからだができあがります。この過程は発生と呼ばれます。特に、胚の発生の過程では、空間的・時間的な制御のもとに細胞の性質がめまぐるしく変化し、しだいに秩序だった組織・器官が形成されます。このような胚発生はゲノムがもつ遺伝情報に基づいて進行します。私たちは、この遺伝情報の読み出しの仕組みを、ゼブラフィッシュという熱帯魚を用いて研究しています。

ゼブラフィッシュは、コイ科の小型魚類で、飼育が容易、多産、世代交代期間が比較的短い(?3ヶ月)という遺伝学に適した特徴をもちます。さらに、母体外で受精・発生し、かつ胚が透明で観察しやすいなど、発生生物学に適した特徴もあわせ持っています。脊椎動物の種の間では魚からヒトに至るまで、胚発生のプロセスや組織・器官の機能は高度に保存されています。したがって、ヒトの遺伝子の機能の解明や疾患の生物学的な原因の追及がゼブラフィッシュをモデル生物として調べることが可能です。

fig.1

Sox転写因子ファミリーの胚発生過程における役割の解明

iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、Sox2・Oct4・Klf4・Mycと名前がつけられた4つの転写因子(遺伝子調節タンパク質)を用いることで作製することができます。この例からもわかるように転写因子は細胞の特定の状態をつくり上げるのに非常に重要なタンパク質群ですが、どのような仕組みで細胞の状態を変化させるのかについてはいまだに多くの謎があります。私たちは、Sox2をはじめとしたSox転写因子ファミリーが、胚の発生過程でさまざまな種類の細胞が出来てくる過程(この過程は細胞分化と呼ばれます)で、どのような役割をもっているのかの解明を目指しています。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる遺伝子のノックダウン(遺伝子の働きを抑える)やゲノム編集による遺伝子改変などの遺伝子操作技術を総動員してこの問題に挑んでいます。

fig.2

環境要因が胚の発生におよぼす影響の分子的な仕組みの解明

胚の発生は、複雑なプロセスの積み重ねからできており、胚が置かれた環境が胚発生に大きな影響を与えます。ヒトの場合でも、母親が摂取した医薬品などの化学物質が胎児の発生に影響を及ぼす例が知られていますが、どのような仕組みで影響がでるのかについては未解明の問題が数多く残されています。例えば、ヒトの胚はアルコール(エタノール)に非常に敏感ですが、作用機構に関してはいまだによく分からない点があるのです。ゼブラフィッシュの胚もヒト胚と同様に化学物質に敏感であり、エタノールに関しても類似した影響が現れます。私たちは、このような化学物質がどのような仕組みで、胚の発生に影響を与えているのかを、特に遺伝子の発現との関係に焦点を当てて研究しています。

fig.3