高知工科大学 環境理工学群生命科学専攻シンボル

細胞分子遺伝研究室大濱研究室

これまで医薬品といえば,比較的小さな分子量を持つ有機化学分子で、細胞の表面や細胞内ある標的タンパクの反応部位に結合して、本来の基質の結合を防ぐ事で,望ましくない反応を阻害して病状を改善するというのが,その作用機構でした。これに対して,バイオ医薬品と言うのがあります。抗体は,バイオ医薬品の代表例です。

抗体のY字の先端部のアミノ酸配列は、変化に富んでおり、その配列の違いにより、細胞表面にある特定のタンパク質に結合することができます。多くのガン細胞では、正常細胞には見られないタンパク質が細胞表面に認められます。このようなガン細胞に特有のタンパク質に結合する抗体を手に入れて、ガン細胞の表面に抗体を付着させます。抗体が付着したガン細胞は、マクロファージなどによって効率よく消化されます。抗体は標的に対して、非常に高い特異性を持つので、多くの有機化合物由来の抗ガン剤と比べてその副作用は極めて少ないことが証明されています。

問題は,タンパクである抗体分子は,合成化学薬品に比べて、細胞内で容易に分解されてしまう事です。そのため、完治までには大量の抗体が必要とされます。これまで,ヒト抗体はヒト細胞を培養することで供給されてきました。しかし、ヒト細胞の培養には、高価な培地と動物ウイルスを排除するための高度培養設備が必須なため,非常に高価なものとなってしまっています。

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ヒト培養細胞に代わるものとして、タバコのなどの陸上植物を用いた抗体生産が試されています。植物には,動物ウィルスが感染する可能性がないため高度な培養施設の必要性がなく,しかも高価な培地も必要とされないので,ヒト抗体遺伝子を植物に導入する事で,安価にヒト抗体を生産できる可能性があります。私たちの研究室では、さらに一歩進めて,陸上植物ではな,単細胞緑藻のクラミドモナスでの抗体生産を目指しています。

根や茎,葉のない単細胞緑藻のクラミドモナスは,液体培養が可能で,その細胞分裂の速度はタバコ植物よりも早く,有害な成分を含まないという有利性があります。改善すべき問題点としては、外来遺伝子由来のタンパクの発現が低いという点が挙げられす。クラミドモナスでは、自己の遺伝子と外来の非自己遺伝子が厳密に識別され,遺伝子工的に外部から導入された遺伝子は,強い転写抑制を受けてしまいます(遺伝子サイレンシング)。そのため導入された外来遺伝子由来の産物は、細胞内全タンパクの0. 01パーセント程度に留まります。

私たちの研究室では、外来遺伝子の発現抑制に関与することが示されている、ヒストン修飾やRNA干渉等の機構の変異体を作成する事により,外来遺伝子の大量発現システムを構築しようとしています。